本日開演《夏の記憶》
「日本には四季がある」と思っていましたが、最近はあっという間に季節が変わるという印象があります。スペインに留学していた時「ここには夏と冬しかないんじゃないか?」と思いましたが、日本もそれに近くなってきたような気がします。私が生まれ、18歳まで過ごした北海道の最南端、函館市の隣の町では、厳しい冬は長くあるものの、夏と言える季節はとても儚く、いつの間にか秋になってしまいます。その代わり、その移り変わりはとても緩やかで、一体今がいつの季節なのかを忘れてしまうほど、ゆっくりと進みます。
京都に住んでもう40年以上が経ちますが、お陰で夏と言う季節の良さを感じる事ができるようになりました。勿論猛暑が好きなわけではありませんが、あの灼熱の暑さの中には、人間が行きて行く為のエネルギーや、その時々に私達が感じなければ行けない、情念や、熱情を内包しているとさえ思えるからです。
なのに私の「夏の記憶」はなぜか、いつも「静止」しています。きっと、灼熱の日差しの下で、時が過ぎるのをじっと待っているからかもしれません。だから、夏はいつも様々なことを考え、過去の事、未来の事、そして現在の自分を見つめるときでもあるのです。私が夏を好きになったのは、そういう理由であるのかもしれません。
今回は、このコンサートシリーズの7月と8月に演奏した曲と、そのほかの曲をいくつか演奏しますが、それもやはり私にとって、過去と未来と、そして現在だと感じられるからです。キラキラと輝く無数の音楽作品に囲まれながら、何度も何度も近づき、離れ、少しずつ自分の求める音楽に身を委ねて行く事ができればと願っています。その時間の流れを皆様とともに共有できればと、願っています。
(藤井眞吾:記/2019年9月21日)
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- by Shingo Fujii