「メーカー毎の高音弦の傾向-1」〜ギター弦の話(4)

 前回までの話の要点、あるいは気をつけなければいけない点をまとめますと・・・


  1. 張力 Tension を表わす「Noramal」や「Hard」などの言葉に、メーカー毎の一貫した基準はない。
  2. したがって、あるメーカーの「Low Tension」は別のメーカーの「Normal Tension」より“張りが強い(High Tension)”と言うことがある。


・・・ということでした。


 今回は「高音弦 Upper Strings」に関して、各メーカーの傾向、あるいはそこから垣間みることの出来る、メーカー毎の「ポリシー」さらには「哲学」とでも言えるようなことを考察してみたいと思います。


 六本の弦の張力の総量(Total Tension of six strings)がいくらであるかと言うことは重要ですが、それと同時に、あるいはそれ以上に六本の弦の張力の「バランス/比率」がどうなっているかと言うことは非常に重要です。なぜ「比率」が重要であると考えるかは、もう少しあとで述べるとして、まずは実際にメーカー毎に「張力の比率 Tension Ratio」がどうなっているかと言うことを見ていきましょう。


 ここから先では「張力比率 Tension Ratio = Tesion of the string / Tension of 1st string」、すなわちある弦に対して張力比率がいくらであるかと言った場合「1弦に対していくらであるか」と定義します。具体的に以下に見ていきます。


D'Addario 社の場合


 オーソドックスな弦として人気を得ている(であろう) D'Addario社は Pro Arte Nylon Core ブランドの他に最近は Pro Arte TitaniumPro Arte Carbon、と三種類の他、第3弦には Composite という弦も取り揃えています。


 中でも、最も一般的な Pro Arte Nylon Core は、Light (EJ43)、Normal (EJ45)、Hard (EJ46)、Extra Hard (EJ44)、と四段階の異なる張力を供給しています。それらの「張力 Tension」と「張力比率 Tension Ratio」を表にまとめたのが以下の「表-1」です。


表-1 Pro-Arte Nylon Core
 
3rd
2nd
1st
Light
total=17.62kg
5.230 kg
5.290 kg
7.100 kg
0.74 (=5.230/7.100)
0.75 (=5.290/7.100)
1.00 (=7.100/7.100)
Normal
tatal=18.21kg
5.390 kg
5.460 kg
7.360 kg
0.74
0.75
1.00
Hard
total=18.84kg
5.580 kg
5.630 kg
7.630 kg
0.73
0.74
1.00
Extra Hard
total19.48kg
5.740 kg
5.840 kg
7.900 kg
0.73
0.74
1.00

 表の上の行は「張力の絶対値 Absolute Value」、下の行は「張力比率 Tension Ratio」です。たとえば Normal の場合「1弦=7.360 kg」「2弦=5.290 kg」ですから、「2弦の張力比率=5.290÷7.36」で算出され「0.75」。1弦は当然常に「張力比率=1」となるわけです。

 ここでは張力の絶対値よりも、比率に注目してください。


 次は「チタニウム Titanium」の場合、「表-2」を見てみましょう。Normal、Hard、Extra Hard、と三種類があります。


 

表-2 Pro-Arte Titanium
 
3rd
2nd
1st
Normal
total=18.84 kg
5.470 kg
5.550 kg
7.460 kg
0.73
0.74
1.00
Hard
total=19.09 kg
5.640 kg
5.720 kg
7.730 kg
0.73
0.74
1.00
Extra Hard
total=19.71 kg
5.810 kg
5.910 kg
7.990 kg
0.73
0.74
1.00


 Pro-Arte Nylon Pro-Arte Titanium を比較した場合・・・


張力比率はほとんど同じに設計された弦である


・・・と言う事ができますが、「Nylon Hard total=18.84 kg = Titanium Normal total=18.84 kg」「Nylon Extra Hard total=19.48 kg ≒ Titanium Hard total=19.09 kg」という張力の絶対値から見ればそのクラス分けは・・・


Pro-Arte Titanium のほうが Pro-Arte Nylon よりも一段階強いテンションの弦である


・・・と言う事ができるでしょう。


 次は「カーボン Carbon」の場合、「表-3」を見てみましょう。Normal、Hard、の三種類があります。


 

表-3 Pro-Arte Carbon
 
3rd
2nd
1st
Normal
total=23.13 kg
6.501 kg
6.968 kg
9.665 kg
0.67
0.72
1.00
Hard
total=24.52 kg
6.819 kg
7.386 kg
10.323 kg
0.66
0.72
1.00


1.Nylon Core とTitanium では・・・

2弦の張力比率=約0.74

3弦の張力比率=約0.73

2.Carbon の場合は・・・

2弦の張力比率= 0.72

3弦の張力比率=約0.67


 張力比率 Tension Ratio としては「1弦>2弦>3弦」という一貫した傾向が見られ、これもこのメーカーの確固とした「方針 policy」であると考える事ができます。



Ratio_daddario



 Carbon 弦の実際の張力(絶対値)はナイロンやチタニウムに比べて、驚くほど高く(=強く)、特に Carbon Hard の1弦「10.323 kg 」という数字は私には使用不可能な強さに思えます。



Tension_daddario


 もとになっているデータはメーカー発表により、おそらくそれらは「実測値 measured value」ではなく、「理論値 theoretical value」であると思われますから、奇麗な数字が並びます。それはともかく、これらの事実から読み取れる重要なポイントは・・・


このメーカーは一貫して張力比率を「2弦は1弦に対して 74%の張力」を持ち、「3弦は1弦に対して73%の張力」であることを、そしてカーボン弦の場合には「2弦は1弦に対して 72%の張力」を持ち、「3弦は1弦に対して67%の張力」であることを「理想 ideal」としている

・・・という点にあるということです。


 次回は他のメーカーついて考えてみましょう。




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