「データ Data」〜ギター弦の話(3)
それは Hannabach 弦のデータに関してですが、これは Strings by Mail というアメリカの通販サイトが公開していたデータをもとにしたものでした。ここでは数値の単位が全て「ポンド lb」だったので、他社のデータと比較する為に私が「ポンド lb → キログラム kg」換算したものでお話をしました(以下がそのもとのデータです。5弦と6弦が全く同じ数値であると言うところをみると、実測値でなく理論値なのではないかと思います。いずれにしろこのメーカーは「5弦と6弦は同じ張力に」という考えがあるようで、これは興味深いことです)。
しかし、昨日 Hannabach 社のサイトを見てみるとカタログが pdf で公開されており、そこでは「キログラム kg」単位で以下のように発表されていましたので、それでもう一度 Pro Arte Normal と比較してみます。
大きな違いはないのですが、このデータによれば「1弦=7.2 kg」なので Pro Arte Normal より「テンションがわずかに低い」ことになります。しかし高音三本の合計でみると「19.5 kg」で、やはりハナバッハの「Low Tension (合計 19.5 kg)」のほうがダダリオの「Normal Tension(合計 18.156 kg)」よりもテンションが強いことに変わりはありません。
1st(E)= 7.2 kg
2nd(B)= 6.1 kg
3rd(G)= 6.2 kg
-------------------
またハナバッハの黄色い袋に入った「Super Low Tension (合計 19.50 kg)」でさえ、ダダリオの「Normal Tension(合計 18.156 kg)」よりテンションが強いことにも変わりはありません。
1st(E)= 7.0 kg
2nd(B)= 6.0 kg
3rd(G)= 6.0 kg
-------------------
尚、D'Addario社の張力データは同社のサイト(D'Addario)から引用しています。
もう一度結論を繰り返しますと、「メーカーが違えば、Normal や Medium、Low や Light、などの基準に共通性はない」ので、その点に気をつけて私達は弦を選択しなければならないと言うことです。もう少しこのことをわかりやすく例えると・・・
A君:僕は高音にはプロアルテの「Normal」張ってるんだ。
B君:へえ、僕は左手の力弱いからハナバッハの「Low」なんだ・・・
・・・という会話があり得るわけですが、じつは Hannabach の Low を使っている B君の方が、高音に関しては A君より「1kg以上」張りの強い弦を張っていると言うことになります。
ここでは、Pro Arte(D'Addario社)と Hannabach 社の弦を例として比較しましたが、その他のメーカーも加えて考察すれば、同様の事象はもっと沢山あるでしょう。
ところで、これらの「張力 Tension」を「数値(数字)」だけで見るのではなく、イメージで見てみたいと思います。そうすればそれぞれの「数値(データ)」の持つ意味がもう少し分かってくるからです。
まず下の図は「D'Adario Noramal 高音弦のテンション」をブラフにしたものです。1弦の張力が突出して強い事が解ります。
次は「Hannabach Low 高音弦のテンション」をグラフにしたものですが、同様に1弦が最も強いテンションである事が解ります。
これらのグラフを重ねて見てみると以下のようになります。1弦はほぼ同じテンションですが、2弦と3弦はその絶対値が「D'Adario Noramal」の場合と「Hannabach Low」の場合では、その絶対値もかなり違う事が解ります。その差が最初に申し上げました《ハナバッハの「Low Tension」のほうがダダリオの「Normal Tension」よりもテンションが強い》という結果につながっているわけです。
さて次回は「なぜ1弦だけが強い張力なのか?」と言うことと、「メーカーによる張力比率の傾向」について述べてみたいと思います。
- comments(0)
- -
- -
- by Shingo Fujii