アンサンブル講習会(3)「何を練習する?」

fingering


 昨日のお話の続きを少しだけします。

 「指揮者と一緒に演奏をする」「指揮者とともに音楽を作る」、そのために「指揮を見る」というやりかたは、とくにクラシック・ギターをされている方達には求められる意識、あるいは技術です。よく、合奏をしていながら「ほかのパートの人の音をよく聞いてあわせて!」なんて叫んでいる指揮者がいますが、それは大きな間違いです。いかなる場合でも演奏者があわせなければ行けないのは、「指揮者の棒にあわせる」なのです。指揮者が演奏者に、そのような要求をすると言うのは、ほとんど「職務放棄」と言って良いでしょう。

 「天使の協奏曲」はおかげさまで2006年7月20日に京都で、そして22日には博多で初演されました。練習の甲斐あって、本当に立派な演奏でした。京都での第3楽章の演奏をお聴きください。




 さて、もうひとつの忘れ難い経験、今日の本題ををお話しましょう。

 ギター教室の主宰する合奏団のレッスンを頼まれて、見ることがありました。あるギター教室の、そして二三度聞かせて頂いていた合奏団だったのですが、どうしたらもっと良くなるだろうか・・・、何が原因なんだろうか・・・、と考えていました。ひとつ明らかだったのは、ここはこのように弾きましょう・・・、あそこはあのように弾きましょう・・・、なぜならここはこうだから、あそこはああだから、と説明してもなかなかそうはならないという現象でした。

 これは個人レッスンをしていてもしばしばあることで、弾き方、表現の仕方、発想の仕方、結果的に運指を変えたりすることを要求しても、その場でそれが出来ないと言うこと。それがどんなに簡単なことでも・・・。最後には「家に帰って練習して来ます」と言うのですが、そういう人に限って、次回レッスンでも同じことを繰り返していて、忠告は奇麗さっぱり忘れています。

 おそらくこういうことの原因は「事前の練習の仕方に原因があるのだろう」と考えて、ある時、「先生、楽譜は一ヶ月前には送って下さい」というから「いいえ、今回は簡単な曲ですから事前に楽譜は送りません、当日に配布します」と言うことにしました。曲は誰もが知っている日本の旋律で、技術もきわめて平易なものを使って、でも音楽的には十分な変化があり、面白いものを用意しました。

 当日、合奏団のメンバーが当惑し、尻込みもしていたようでしたが、丁寧な練習と説明を繰り返しながら、二時間後には立派な演奏が形になって来ました。音楽の表現も、完全とは行かなくても、私が意図する方向になっていましたし、なによりも演奏者達が、練習が始まる時には後ろ向きだった姿勢が、作品の音楽内容に興味がわいて来たことを示すように、キラキラとした演奏を聴かせてくれるようになっていました。

 そして最後に「15分間の休憩! そして最後にもう一度、演奏会の本番と同じ気持ちで演奏して終わりとしましょう!」ということで、私は給水。メンバーの人達は休むことも無く練習を続けていたのですが、その時私はいささか驚く光景を目にしたのでした。そして同時に不安が脳裏を掠めました。まあ、ともかく休憩時間も終わって、最後の演奏を開始しました。本番と同じような気持ちで。

 ところが、最後の演奏は、まるで最初の段階に戻ったかのように、演奏に生彩は無く、私の指揮を見ることも忘れてしまうし、アンサンブルもバラバラの状態でした。それは私だけでなく、演奏しているメンバーの人達も急変振りに当惑している事が解りました。

 私がアンサンブルを指導するのは、アンサンブルという個人ではないやり方を通じて、音楽を修得して行くプロセスは、きわめて客観的であり、そのことはクラシック・ギタリストが独奏を勉強していくプロセスでも一緒であり、両方の勉強が共存できるからなのです。最後の最後にこの合奏団の演奏が、寸前まで出来たものをわずか15分間の休憩で失ってしまったその原因は「休憩の間にやったこと」にありました。

 私が「15分の休憩」と言った時、すぐさま各パートリーダーが「集まって〜!」とメンバーに声をかけ、「運指」を伝達し始めたのです。メンバーは鉛筆を取り出し、自分の楽譜にパートリーダーの言う運指を必死で書き写し、それを練習したのでした。つまり、最後の演奏に入った時、演奏者達の頭のなかには、さっきまで輝いていた音楽の響きは姿を消し、「1、4、0、3」とかいう言う運指の数字でいっぱいになっていたのです。それを遂行することが、つまりパートリーダーから言い渡された運指で弾くことが、彼ら/彼女達の「演奏の目的」になっていたのです。それが原因でした。


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藤井眞吾によるギターアンサンブル講習会 3/28





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